Essay



辻井喬氏を偲ぶ


一柳 慧

当協会の理事を務めて下さっていたセゾン文化財団理事長の堤清二氏が、昨年暮れに亡くなられました。堤氏は、かつては西武グループの総師であり、辻井喬というペンネームになってからは、詩人として、また、小説家として多くの優れた作品を残されました。私は辻井さんとは1970年代から約40年間、いろいろなかたちでお付合いをさせていただいてきました。
私は辻井さんのいくつかの詩を使わせていただいて、歌曲や合唱曲を作曲しています。また、それが最後の協同の仕事になってしまい、残念なことですが、私のオペラ「愛の白夜」の脚本までお願いして書いていただきました。このオペラは2006年と2009年に2度ずつ上演されていますが、日本にはオペラの脚本家という職業はいまだ定着しておらず、多くの方が苦労されている中で、辻井さんは初体験であったにもかかわらず、音楽にも配慮のゆきとどいた見事な脚本を仕上げて下さいました。
この私達の会が始まって間もなく、体調を崩されたようですが、協会の会報誌にも辻井さんならではのフィンランド観を綴った文章をお書きいただいています。
いろいろな意味に於いて、かけがえのない人格者であった先輩を失って、今は言葉もありません。
心からのご冥福を祈念いたします。合掌。



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