新型コロナウィルスの感染拡大によって、昨年2月下旬から公演や展覧会、文化イベントなどが
中止・延期になり、2021年を迎えた現在もその猛威は続いています。
2020年、本協会は、会員の皆様及び、日本・フィンランド両国に住む音楽関係者の方々に、
このコロナ禍における様々なアンケートを行いました。

カーソルを氏名部分に持って行きクリックすると皆様の意見が見られます。

まずはじめに、私は医者でも、生物学者でも、人類学者…
一柳 慧

文明は人間がここまで出来るということを示し、文化とは…
新井 淑子

新型コロナが発生してから集団での活動が一切出来なく…
大島 正博

一番大きな変化は、3月末以来、ほぼ電車に乗って…
越智 淳子

外出が思うようにできない中、ネット配信で音楽や…
高橋 絵里子

全世界が同じ問題を抱え共有している意味を考える…
福士 恭子

フィンランドでは、私を含め全ての音楽家がCovid-19の影響を受けています…
In Finland every musician has been…
セッポ・キマネン

作曲家として、近年は特に室内楽作品に力を入れています。このように、…
Säveltäjänä olen viime vuosina keskittynyt…
ユハ・T・コスキネン

パンデミックにより、私の研究活動はさまざまな困難に直面しました…
The pandemic has posed various difficulties…
ラッセ・レヘトネン

多くの公演や初演が延期またはキャンセルされ、私自身も初演を…
Well, many performances and first performances…
アリ・ロンパネン

すべてのコンサートは春にキャンセルされました。教育活動も…
All concerts were cancelled in spring. Teaching…
イナリ / ヨハン・ティッリ

一柳 慧 作曲家・ピアニスト

まずはじめに、私は医者でも、生物学者でも、人類学者でもないので、コロナに関することは一音楽家としての感覚的な発言になることをお許しください。
今一番気になることは、昔からの地球上で、人類が育んできた生活や歴史や伝統、そして近代では科学や技術が進歩することによって、過去からも自然からもどんどん遠くなる傾向にあることです。忘れかけていることを元の状態に戻すのは至難なわけですが、すべてのものが人工的になってきているからこそ、自然を大事にしていく必要があります。人間は本来、宇宙で自然の中から発生してきて、独立した存在ではありません。自然の一部であり、宇宙や地球の分身でもあります。
しかし最近の状態を見ていると、人間が独立した存在で、人間中心といってもいいぐらいの偏りが強くなってきているように思われます。
人工的、人為的なことが人間の生きる目的や、存在のように位置付けられています。
どの国の人も経験していないコロナウィルスに多くの人が冒され、直面している今、その辺りのことに気を配り、向き合うことが問われてきているのではないでしょうか。

およそ100年前、第一次世界大戦のころのスペイン風邪で、ドイツ軍が何度も「本日、西部戦線異状なし」と伝えていましたが、それは戦争とともに敵も味方もなく、多くの犠牲者を出した、スペイン風邪の状況のことをも意味していたのですね。
1918年ごろから、3年半後ほどのちにやっと収束しましたが、その状況を知る人は今はもういません。
今、アメリカでは連日10~15万ほどの感染者が出ていて、全体で5000万人近くの方が亡くなっているわけで、こんな状況下ではウィルスと共存という考え方はありえないでしょう。(2020.11.13現在)これからまた、別のもっと恐ろしいウィルスの発生や、災害などが起こる可能性も考えられます。  

ある専門家の方から聞いた話ですが、今、地球上に存在し、人間が共存できる動植物100万種ぐらいの益虫が激減してきていて、それに代わり、気候変動や環境の変化のために、自分たちの生活の場を侵され、共存できない害虫がかなり増えてきているというのです。
私達はそれに充分気づいていません。この間も大量のバッタがかなりの飛距離で、広範囲に被害をもたらすことが問題になりました。コウモリもコロナと関係があるようですし、南米のヒアリや世界中のネズミなども人間と同じ場では共存できません。
100年前のスペイン風邪の頃、地球の人口は約19億で、罹患者は5~6億人、死者は3~4千万人、日本は人口5700万弱で、罹患者が2300万人、死者38万人であったと言われています。今地球の人口は約77億人です。人間の経済活動や技術活動などが、このまま何年も続いたら、人類の数は激減するでしょう それでなくてもさまざまな災害や人間同士の分断や、戦争も起こるかもしれません。原発の問題もあります。
この1年のコロナでさまざまな芸術や文化、スポーツなど多くの活動が大きく損なわれました。そして今、音楽に対しても、先見を持って考え方や在り方や行い方、言い換えれば人間が生活の仕方を変えてゆく必要が不可欠になってくるように思います。例えば、音楽を生ではなく、オンラインで聞くのは一時しのぎの貧しい対処の域を出ないでしょう。
Go to Travelで人が動き、寒くなり、感染者が増えてきました。野球もサッカーも全面的に開放する予定だったものが、3月までは今の状態を保つことになりました。そういうことを考えると、ちょっとしたことを音楽で考えてやっても、社会に対してどのくらいの価値や意味があるか、コロナの問題に対しても意味を持つものになるか。座席をひとつずつ開けるとか、三密回避も必要ですが、それは人間が生きてゆく上で末梢的なものにすぎません。もう少し根本的な問題を考える必要があります。

音楽は時代の変化とともに、今まで付き合いのなかった国との関係が出来て、同じ「音楽」、同じ「人間」なのに、分断的な社会を作り出しています。そのため、前を向いてどんどん人間がこの世の中を支配しているという進め方ではなく、むしろ逆に伝統的なものをもう一度、今、コロナ時代の観点も含めて、見直す必要があると思います。 

50,60年前に海外へ出た時、バロックから古典時代の音楽の見慣れない楽譜が、たくさん出版されていたことがありました。
時代も環境も変わり、生きている人間の営みも変わり、楽器も新しくなり、音楽も変わってきていますが、ビバルディ、バッハ、ヘンデル、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト辺りまで、当時は作曲家はテンポ、演奏指示などニュアンスを殆ど書いていません。書かれているのは主に音符だけです。それに気づいた一部の音楽家たちの要請で、出版社があえて後世に伝えられたニュアンスを省いているのです。
さまざまな表現方法は、後の演奏家が自分の演奏のニュアンスのために、付け足していたものです。そういった楽譜を、どの書店にいっても大勢の人が見ていました。
ただこれも一時的で長続きはしませんでした。ベートーヴェンの信頼おける楽譜においても、表現がかなり限られていて、その通りに弾くと今聞いているベートヴェンとは違うものが聞こえてきます。その前のバロック時代は、音符が書いてあっても、装飾音の演奏の仕方、長さは人によって違いました。それをやっていたのは、今でいう演奏家ですが、そのころは演奏家と作曲家の区別がありませんでした。総じて「音楽家」として認識されていたのです。
だんだんニュアンスが複雑になってきて、19世紀に入って、音楽も感情的なものが導入されてきて、近代、現代になって更に複雑になり、音符だけではない、言葉を含めた要素が増えてきました。昔との一番の違いはそこにあると思います。人間社会の変遷が産業革命と重複して、音楽もそれに準じ、それまで作曲家が演奏や指揮をしていたのが、分かれてきました。そうでないのはやはりアジア、日本の伝統音楽で、西洋音楽の影響を受けたところもありますが、基本は変わっていません。作曲家と演奏家の間に違いはない、みんな音楽家なのです。

私の80歳の記念演奏会の時に、高橋悠治が言った一言が本質をついていました。今までの習慣で作曲家がリハーサルに立ち会って、アドヴァイスを言うことがありますが、彼が言ったのは次の一言だけ。弾き終わった後、「みんなそんなにうまく弾く必要ないんですよ。」ちょっと唐突に思われるかもしれませんが、私はそれを聞いて、これだ、と思いましたね。それは正に昔の楽譜の演奏とその在り方を指していたからです。
高橋氏には三味線の高田和子さんに書いた曲がたくさんあり、私に、日本の楽器と彼自身が弾くピアノ、声を合わせた楽譜をいくつか見せてくれました。グラフィックみたいなもの、昔の楽譜みたいに音符以外何も書いていないもの、演奏家泣かせの、上下の関係がどこで合わせればいいかわからないものなどがあり、演奏家が困ってリハーサルで本人に聞くと、「そんなにうまく弾かなくていい」と言われる。高橋氏にとってそれはうまく弾いていることにはならないのでしょう。音楽の本質は他にあるということを言いたかったのだと思います。
もうひとつはシュトックハウゼンが何度も来日していますが、毎回のように言われたことがあります。彼は最近のものより日本の伝統的なものが好きで、物だけではない、日本のいろいろなアートに関して、「とてもじゃないけれど、これが芸術になるのかというようなもの、茶、花、庭園など、あらゆるものを日本人はレヴェルの高い芸術に昇華した。素晴らしい。」と。はっきりとは言わないけれど、現代の我々日本人に対する皮肉なのでは、と心の中で思っていました。

このふたりが言っていることは現代の時代や社会、そしてコロナの時代に意味を持つものです。音楽の形、本質、考え方が作曲家と演奏家という別々の捉え方ではないのです。
日本の伝統音楽に取り組むとき、楽譜を読むより、お師匠さんが弾いたものをまねして弾くのが一般的ですが、それは楽譜が割と軽視されているとも言えます。逆に音楽の側から言うと、譜面を見ているというのは、音楽を視覚的にとらえていることになるけれど、伝統音楽の学び方は聴覚、つまり耳が先に来るわけで、お互いの聞きあいが大切になります。聞きながら、合わせたり、合わせなかったりする。そういうベーシックなことを考えていくと、コロナの束縛を受けている今、これまで長いこと西洋音楽の発展が絶対的だとする見方や在り方に代わるものが求められていると思うのです。
楽譜の書き方で、余計なニュアンスを与えないで、どんなテンポ、強弱、ニュアンスで弾くか、音楽家それぞれが考える機会として、今までの学校教育を続けるのではなく、そうではない先生と生徒が対等な関係の在り方を基本的に考える必要や価値があると思います。

2020年11月13日 インタビュー / 2021年2月14日 追記

新井 淑子 バイオリニスト

『文明は人間がここまで出来るということを示し、文化とは人間がそこまでやってはいけないと教える』昔こんな考えが脳裡を掠めるときいつも、芸術に求められている使命の重さを痛感していました。

自分の手で微力ながらでも音楽を通じて人の感性に呼びかけることができなくなった今、そしてコロナ禍の真っ最中茫然と立ち止まっている今、日々勝手に入ってくる膨大な情報に溺れている自分に気がついているところです。そこから学ぶことは、経済の虜になってしまった人間が感性の喪失に気づかないでいることが、どれほど危険なことか!

たとえ明日世界が滅びても、今日りんごの木を植えておきたい!(マルティン・ルター)

私たちの子孫が幸せな人生を送り続けるための最低限の条件をこの地球に残してゆくためには一人ひとりが出来ることをやっていくしかない、という極当たり前のことを新たに感じているところです。

2020年12月

大島 正博 日本・フィンランド新音楽協会運営委員、日本音楽芸術マネジメント学会会員

1. 現在のコロナ禍で、ご自身の状況はどのように変化していますか?
変わらない側面も含め、具体的にお知らせください。

新型コロナが発生してから集団での活動が一切出来なくなりました。一例ですが合唱の練習は出来なくなりましたし、毎月の様に行っていた保育園や色々な施設・お祭りなどでのバルーンアートのボランティア活動も昨年2月末を最後に実施出来なくなりました。
また、時々聴きに行っていたオーケストラの演奏会やオペラも軒並み中止になってしまいましたので、この機会に一人でできる事をやるしかないと思い取り組んでおります。
もともと音楽についてはアマチュアなのですけれども、ヴィオラを触って時々レッスンに通っておりましたが、練習スタジオが密な空間ということもあってレッスンは中止となり、独学で練習する羽目となりました。
また、時間を持て余し何を思ったのかギターも買い込み70の手習いでギターを独習を開始。いくつかの曲が弾けるようになりました。
バルーンアート活動はコロナ発生前には毎週の様に練習を行っていたのですが、練習場所が確保できなくなり、ようやく最近2週間に一度位仲間と集まってマスクやフェイスシールドをしながら作品作りをしております。
9月に仲間と風船で作った作品が以下の様に出来上がりました。
また10月には小学校の記念式典の装飾を作成しました。

バルーンで作ったぶどう棚

小学校の70周年記念装飾

2.コロナ禍での芸術・文化の現状をどう思いますか?
ご存知の世界各国の対応事例をお知らせください。日本の芸術家への支援についてどう思いますか?

世界各国の対応事例は余り存じ上げないのですが、ドイツ・フライブルグ音楽医学研究所、フライブルグ大学病院、フライブルグ音楽大学では「音楽の領域におけるコロナウィルス感染のリスク評価」という研究が行われており、また、オーストリア合唱協会がウィーン医科大学の協力によって実施した「合唱団員の呼吸時と歌唱時における呼気飛散の実験」なども行われ音楽活動の参考になってる様です。 日本の芸術家に対する支援についてはまだまだ十分ではない状況にあると思っております。
私が所属する日本音楽芸術マネジメント学会では「新型コロナウィルス感染拡大による舞台芸術分野への影響について」と題する要望書をまとめ

1.舞台芸術関連の諸団体、企業等への支援
2.フリーランスの専門的な職能者への支援
3.現場の要望を反映した施策の策定

について文化庁に要望として提出しました。今後政策にどのように反映されるのかは現時点では不明です。

3.コロナ禍の現状そしてコロナ後の音楽活動はどう変化していくでしょうか?
演奏家、そして聴衆はどのように変化していくか、または変化しないと思われますか?

最近では新型コロナウィルス感染症の出現の他、地球環境の悪化に起因されるとされる異常気象、大地震のリスクなど生活面においてリスクマネジメントは欠かせない状況になって来ていると思われます。音楽活動においても今回の感染症対応で経験した教訓を生かしてこれを乗り越えることが必要と考えております。
基本的に音楽に対する欲求は人々にとって不変のものであり、現在は一時的に活動は縮小しているものの必ずこの困難を乗り越えられると信じております。

4. 新型コロナは長期化が懸念されていますが、皆様の音楽活動の中で
これを乗り越える工夫やアイディアがありましたら、具体的にお知らせください。

現在、合唱活動では全日本合唱連盟がまとめた「合唱活動における新型コロナウィルス感染症拡大防止のガイドライン」にのっとり、合唱団員でコロナ感染症予防対策を練習場所で確認したうえで練習再開が検討されております。密集を避けるために広い練習場所を確保する必要があり費用も必要となります。
一方では、ハミングで歌える曲などもいくつか試みとして作曲され、東京混声合唱団で初演されました。
また、オンラインでの配信の試みもされつつあり、映像配信ということはこれまで我が国のクラシック音楽の分野ではこれまで余り行われてこなかったものが今後新たな観客の創出や楽しみ方として定着していくのではないかと思っております。

5. コロナ禍は環境問題と関連していると思いますか?
思う場合は、具体例をあげてお考えをお伝えください。

コロナ禍と環境問題は関連しているとは考えておりません。
交通機関の発達により人々の往来が頻繁にそして容易に可能になったことで感染症が拡大し易くなってしまう状況になっているのだろうと思います。

2020年10月

越智 淳子 日本・フィンランド新音楽協会理事

1. 現在のコロナ禍で、ご自身の状況はどのように変化していますか?
変わらない側面も含め、具体的にお知らせください。

一番大きな変化は、3月末以来、ほぼ電車に乗って出かけていないことです。近所を散歩することは少しふえましたが。
それ以外は、生活上で大きな変化はあまりありません。もともと一種の隠居生活になっていましたから、例えば仕事(翻訳)や執筆なども在宅作業ですし、ヴォランティア、趣味などもズームを通して活動できます。
というわけで、コロナによる精神的ストレスはあまり感じずにすんでいます。もっとも、現役世代にとっては本当に苦労が多いと想像します。コロナ禍が一刻も早く終息してほしいと望むばかりです。

2.コロナ禍での芸術・文化の現状をどう思いますか?
ご存知の世界各国の対応事例をお知らせください。日本の芸術家への支援についてどう思いますか?

特にパフォーミング・アーツの分野では大変だろうと思いますし、心おきなく自由に鑑賞できないのは、とても残念です。
外国の事例は、作家の多和田葉子さんによれば、ドイツではなんらかの支援があるようですが、詳細はわかりません。
芸術家に対しては、日本政府はなんらかの支援―具体的には、商業的に難しい音楽、演劇、美術展などのオンライン配信などへ資金援助をするべきと考えます。

3.コロナ禍の現状そしてコロナ後の音楽活動はどう変化していくでしょうか?
演奏家、そして聴衆はどのように変化していくか、または変化しないと思われますか?

オンライン配信が普及していくのではないかと思います。
実際に会場に行ける人と、遠い地方でコンサートや演劇鑑賞の機会が少ない人たちには、これまでのテレビの舞台中継以上の質が要求される配信内容が発達するのではないかと思います。

4. 新型コロナは長期化が懸念されていますが、皆様の音楽活動の中で
これを乗り越える工夫やアイディアがありましたら、具体的にお知らせください。

5. コロナ禍は環境問題と関連していると思いますか?
思う場合は、具体例をあげてお考えをお伝えください。

関連していると思います。コロナ禍での経済的抑制によって、インドから30年ぶりにヒマラヤ山頂が見えたりするのが一例と思います。
今年の春から夏は我が家の庭の草木も一段と元気良いように感じました。人間の生活の変化は、たとえば、日本なら奈良時代から江戸時代まで、本質的に自然物を利用するだけで変わらなかったのが、わずかここ100年ちょっとで急速に変化してきました。化石エネルギーは地球規模の変化をもたらし、そして核兵器開発から派生した原子力エネルギーは、放射性廃棄物処理の方法を考えないままに進んでいます。
本当に今、持続可能な、自然・再生エネルギーの方向に舵を切らなければならない時期にきていると思います。
そして経済開発・成長神話に代わる考えが必要になるでしょう。

2020年10月

高橋 絵里子  ピアニスト

1. 現在のコロナ禍で、ご自身の状況はどのように変化していますか?変わらない側面も含め、具体的にお知らせください。

外出が思うようにできない中、ネット配信で音楽や公演を聴いたり、人と直接会う代わりにメールや通話アプリを使うなどインターネットのサービスを利用する機会が増えました。また家にいる時間が長くなったことで、自分自身や音楽に向き合い、練習に充てる時間が増えたのは良いことだと思っています。

緊急事態宣言の際、ZoomやSkypeを使ってオンラインでピアノレッスンをしました。対面レッスンにはかなわないものの、思っていたよりも多くのことができ、いい意味での驚きや発見がありました。

また勤務先の教室では、7月末に少人数で完全入れ替え制での発表会が執り行われました。何事もなく無事に終了しましたが、消毒や検温、タイムスケジュールなど配慮することが増えました。今後コロナが長期化するとなかなか大変だなと感じています。

2.コロナ禍はまだ先が見えない状況ですが、社会と個人の対処、あるいは社会と個人の関係はどうなっているか、あるいはどうあるべきと思いますか?

コロナ禍によって、それ以前に比べ一人一人がより人や社会とのかかわり方、在り方、働き方について考える機会があったと思います。
格差の拡大や社会の不寛容など様々な問題が浮き彫りになり、根本的な解決への道は長いですが、より多様な価値観や働き方を認め合い、色々な立場の人が生きやすい世の中になってほしいと思います。

3.コロナ禍は環境問題と関連していると思いますか?
思う場合は、具体例をあげてお考えをお伝えください。

大いに関連していると思います。例えばロックダウンのさなか、中国を始め大都市での大気汚染が大幅に改善し、ヴェネチアの運河がきれいになったことで、人間の活動が環境に与えていた影響の大きさが浮き彫りになりました。今後持続可能な社会を実現するうえで、北欧諸国の取り組みには大いに注目する価値があると思います。

またコロナ禍の始まる以前に、航空機を使った移動の減少を呼びかける運動(「飛び恥」)が話題になりました。無駄な移動を減らしネットを積極的に活用することには賛成ですが、芸術にしても旅にしても、実際に現場に足を運んでこそ味わえる感動の大切さも社会から失われることのないよう、願っています。

4.コロナ禍での芸術・文化の現状をどう思いますか?ご存知の世界各国の対応事例をお知らせください。
日本の芸術家への支援についてどう思いますか?

本場ヨーロッパでは政府も芸術分野への支援に積極的に見受けられます。
例えばドイツでは、1300億ユーロ(約16兆円)規模の景気刺激策うち10億ユーロ(1200億円)以上を文化芸術支援に充てることが表明されました(6月3日時点)。各文化施設のコロナ対策への費用、様々なプロジェクトやデジタルコンテンツへの支援など、項目ごとに分けて充当しています。

いち早くロックダウン及びその解除の政策を打ち出したオーストリアでは、芸術に対する支援総額は9億ユーロ、国内にいる約1万5千人の芸術家に対し月1000ユーロ支給する方針です。また、各音大では経済面で困っている学生のための基金も早い段階で設けられました。

ノルウェーでも次々に状況が変わり、予測不可能だったとのことです。トロンハイムのオーケストラでは数週間の一時休業期間があったのち、互いに距離を取って少人数編成での練習が再開され、編成人数の関係などでプログラムの変更などはあったものの、5月の建国記念日の演奏会は無事に開催されたようです。(オーケストラに所属する友人談)

日本ではヨーロッパのように「芸術は社会にとって必要不可欠である」という認識は薄く、芸術への政府の予算の割合も変わらず低いままで支援も十分とは言えません。それでも、社会の価値観の多様化や、SNSなどを通じて個人が意見を発信しやすくなったこともあり、芸術家の声も少しずつ認識・反映されやすくなってきたように感じています。

5.コロナ禍の現状そしてコロナ後の音楽活動はどう変化していくでしょうか?演奏家、そして聴衆はどのように変化していくか、または変化しないと思われますか?

今回、オンラインの演奏会やレッスンなどが話題になったように、外出が思うようにできない中でネットの果たした役割は大きいと思います。
これまでヨーロッパの大きなコンサートホールや劇場では有料配信サービスもあったものの、あくまで付随的な印象でしたが、今後はもっと普及していくと思います。一方、現場で生の演奏を体感することへの需要も引き続きなくならないと思いますが、ネットでは味わえない利点などをより明確に打ち出していく必要もあるかと考えます。

6.新型コロナは長期化が懸念されていますが、皆様の音楽活動の中でこれを乗り越える工夫やアイディアがありましたら、具体的にお知らせください。

私の知人で、7月に客数数を減らしてリサイタルを実施した際、公演にお越しになれない方のためにネット中継、後日期間を限定しての録画配信をされた方がいらっしゃいます。また地元の公的援助は条件に合わず、クラウドファンディングで支援を募っていらっしゃいました。

またオーストリアのグラーツ国立音大の現代音楽学科では、ロックダウンが決まった直後からいち早くオンラインレッスンのためのデバイスを貸し出し、学生コンサートもオンラインで実施、ネット配信もしたようです。アンサンブルのレッスンが多いゆえ影響も大きかった筈ですが、この対応の早さと柔軟さには驚かされました。

自分たちにできることへの可能性を常に模索し、あらゆる状況に柔軟に対応することが不可欠だと思います。

<自身の活動について>

国内外の移動が難しい中、幸いにも2020年3月と10月、ウィーンのPorgy&BessそしてAlte Schmiedeにて、以前から予定されていた演奏会に出演する機会に恵まれ、日本及びフィンランド作品の演奏、そして初演を行うことができました。
どちらも辛うじてロックダウンを免れましたが、刻々と変化する現地の状況やPCR検査、他人との接触、帰国後の隔離など多くのことを気に掛ける必要がありました。

© Alte Schmiede

写真はAlte Schmiedeでの演奏会の様子です。席数を通常の3分の1に制限し、ライブ配信が行われました。

2020年8月

福士 恭子 ピアニスト

全世界が同じ問題を抱え共有している意味を考えるときに来ている。
緊急事態宣言で人々の移動が制限された時、空の青さ、夕焼け、星の美しさ、山々の緑の濃さに改めて気づいた。
数ヶ月で目に見える変化がある事に逆に驚き、ひとりひとりの在り方がこれほど影響を与えるのか、個々が小さな事でも出来ることから変えていくべきではないかと考え始めた。

環境汚染が直接のコロナの原因ではないかもしれないが、人々がこのパンデミックによって、環境問題と向き合い、日々の生活から考え直すきっかけになったことは事実だ。

地球温暖化についても更に考える必要がある。政府は2050年までに温室効果ガス削減を打ち出したが、宇沢弘文氏は著作「地球温暖化を考える」(1995年)において、2020年には平均地表気温が産業革命以前の水準より約1.8度、21世紀の終わりには約4度上昇すると書いている。
熱帯雨林を伐採することで地球の温暖化が進み、氷河が溶け、水位が上がり、浸水する街によって環境難民が増えるだろうと。正にその通りに地球は変化しているのだ。

アル ゴアの著作「不都合な真実」(2007年)ではすでにウイルスの危険性として、新型ではないが、コロナについての記述もある。
20、30年の間に新たな病気が出現し、これまで抑えられてきた病気も猛威をふるい始めると予言している。

人間の作り出した便利なものを重視し、予期できるものを放置してしまったために、恐ろしい代価を支払うことになった、警笛と取れないだろうか。

写真:フィンランド放送交響楽団10月演奏会の様子

聴衆はマスク着用、観客も3分の1に制限され2人おきに着席。

2020年11月

セッポ・キマネン Seppo Kimanen
チェリスト   日本・フィンランド新音楽協会(フィンランド支部)理事長

1.How is your situation changing due to Covid-19 pandemic? Are there any aspects which have not changed?

In Finland every musician has been affected by Covid-19, including me personally. Last summer nearly all music festivals were cancelled. On top of playing I was supposed to present and host concerts at some festivals, but instead of expected busy season I ended having practically zero activity. The same happened to all freelancing colleagues. (I only performed at one wedding ceremony from june to august). Personally I am happy to be already in retirement and could replace the lack of concerts by writing a new book (on stories and anecdotes of many musicians I have met during decades as performer and festival organizer). Finnish orchestra players have received salaries, but they have mostly played chamber music in smaller ensembles. Many concerts have been circulated through digital channels and merely a fraction of normal audience has been admitted at live concerts. Since March lessons at music schools were given using inteactive digital means, but now all education is permitted to be live again. We all hope that this will be continued.

フィンランドでは、私を含め全ての音楽家がCovid-19の影響を受けています。
昨夏、ほぼすべての音楽祭がキャンセルされました。私自身、いくつかのフェスティバルで演奏会を主催することになっていましたが、予想されていた忙しい季節に代わって、ほとんど活動がなく終わりました。同じことがすべてのフリーランスの同僚にも起きました。 (私は6月から8月の間、たった一度、結婚式で演奏しました。)
私は、すでに演奏は引退し、その時間を新しい本への執筆活動(演奏家、そしてフェスティバルの主催者として数十年の間に出会った多くのミュージシャンの物語や逸話について)に充てることができるのをうれしく思っています。
フィンランドのオーケストラ奏者には給料が支払われていますが、ほとんどの場合、小さなアンサンブルで室内楽を演奏しています。多くのコンサートがデジタルチャネルを介して配信されており、ライブコンサートには通常の聴衆のほんの一部しか入場できません。 3月以降、音楽学校での授業はオンラインで行われていましたが、現在ではほぼすべてにおいて、通常に再開されています。私達は皆、この状態が継続されるよう望んでいます。

2.What do you think of the current situation of art and culture in your country under Covid-19? Please tell us about your opinions the support from the state or other organizations in your country.

Unfortunately the state is supporting freelance musicians rather poorly. Most festival organizations have been supported sufficiently to survive until the next summer, but many individual artists have been without income for several months. Many are rather desperate already. Music schools are functioning normally, orchestras and National Opera function at about 50% permitted audience capacity. Sibelius Festival in Lahti took place last week at reduced live audience. The future of all the live events depends on the virus. If it spreads extentively more regulation and closures are to be expected. The situation at the moment is fragile, but there is hope that the municipalities and the state will not let the arts collapse completely – at least if this pandemic is over before next summer.

残念ながら、政府はフリーランスの音楽家を十分にサポートしているとは言えません。
ほとんどのフェスティバルの組織は来年の夏まで生き残るために、十分にサポートされていますが、多くの個々のアーティストは数ヶ月間収入がなく、すでにかなり逼迫した状況です。音楽学校は通常通り再開しており、オーケストラと国立オペラは約50%の聴衆を許可されています。ラハティ市のシベリウスフェスティバルは先週、実際の聴衆を削減して開催されました。すべてのライブイベントの将来はウイルスの状況次第といえるでしょう。ウィルスがさらに拡大する場合、より多くの規制と閉鎖が予想されます。現在の状況は脆弱ですが、少なくとも来年の夏までにこのパンデミックが収束する前に、自治体と国家が芸術を完全に崩壊させないよう願っています。

3. How do you think about the musical activities and the situation in your country?
Do you think how the relations of performers and audience have changed in your country?

There are macabre jokes about concert audiences being reduced in number, because most deaths happen among people over 75 and the listeners are also advanced in age. Elderly population is now very prudent and tend to stay home. After pandemic nobody knows whether they will return to live concerts in the same numbers as before. However the intensity of listeners is exceptional and I personally want to believe that the need for good music will continue in spite of Covid-19, or perhaps even thanks to it. Previously art has always been important in difficult times.

ほとんどの死者は75歳以上の人々で、聴衆も高齢化が進んでいるため、コンサートの聴衆の数が減っているというブラック・ジョークがあります。現在、高齢者は非常に慎重で、家に留まる傾向があります。パンデミック後、以前と同じ数のライブコンサートに戻るかどうかは誰にもわかりません。しかし、聴衆の演奏会への期待は高まっており、個人的には、Covid-19にもかかわらず、あるいはそのおかげで、良い音楽の必要性が続くと信じたいと思います。以前も困難な時期において、常に芸術が重要でした。

4. It seems that Covid-19 will last for a long time.
If you have any ideas to overcome this situation through your music activities, please let us know about them in detail.

I believe the state and municipalities will have financial problems. This might mean less support for the arts. However we have many foundations aimed at supporting culture and I believe they will have an important mission if/when less public money will be available. I believe that mecenats will also appear and private concerts including chamber music will become fashionable.

国や地方自治体は財政問題を抱えることになると思います。これが芸術へのサポートが減少することを意味するかもしれません。しかし、文化支援を目的とする多くの財団は、公的資金が少なくなれば、さらに重要な使命を負うと私は信じています。メセナ活動(企業が芸術活動を支援すること)も盛んになり、室内楽をはじめとするプライベートコンサートが流行すると思います。

5. Do you think that Covid-19 is related to global environmental issues?
If you think yes, please give us specific examples and tell us your thoughts.

Yes, I believe this pandemic is not the last, but rather one sign of the new period of several threats including pollution, climate change, national security issues and political turmoil. The gift of music is of great value to the world, but in order to survive musicians have to be active and give their best in each performance.

私はこのパンデミックが最終的な問題ではなく、汚染、気候変動、国家安全保障問題、政治的混乱を含むいくつかの脅威の1つの兆候であると信じています。 音楽の賜物は世界にとって大きな価値がありますが、生き残るためには、音楽家は積極的に活動し、各公演で最善を尽くす必要があります。

2020年10月

ユハ・T・コスキネン Juha T. Koskinen 作曲家

Säveltäjänä olen viime vuosina keskittynyt erityisesti kamarimusiikkiteoksiin. Niinpä pandemian aiheuttama muutos ei ole vielä päässyt vaikuttamaan toimeentulooni yhtä dramaattisesti kuin niiden säveltäjien kohdalla, jotka rakentavat uraansa orkesteri- ja näyttämöteosten varaan. Hyvänä esimerkkinä on Kaija Saariaho, jonka uuden laajan oopperateoksen ”Innocence” kantaesityksen peruuntuminen Aix-en-Provencen festivaalilla kesällä 2020 aiheutti suuren menetyksen sekä säveltäjälle, esiintyjille että yleisölle. Suuret tärkeät teokset, jotka eivät saa kantaesitystä tuoreeltaan, jäävät uinumaan käyttämättömänä voimavarana. Vielä surullisempaa on se, että koronatilanteen jatkuessa moni sävellystilaus jää tekemättä. Musiikkielämän vaikuttajien rohkeus on nyt kovalla koetuksella käytettävien varojen kaventuessa.

私は近年、作曲活動を室内楽作品に重点を置いているため、パンデミックによってもたらされた変化は、オーケストラや大きな舞台作品を発表している作曲家ほどは、影響を受けていません。
一例として、作曲家カイヤ・サーリアホは、2020年夏のエクサンプロヴァンス・フェスティバルで予定されていた新作オペラ「イノセンス」の初演がキャンセルされ、作曲家、演奏者、そして聴衆にとって、大きな損失となりました。初演されない大規模な重要な作品は、演奏されないまま眠っています。さらに残念なのはコロナの状況が続くと、作品の委嘱が減少することです。
音楽家にとって利用できる資金が限られているため、支え、協力する人々による勇気が、今こそ試されています。
また、コンサートプログラムには、あまり知られていない作曲家や珍しい作品が含まれるよう願っています。

Tänä syksynä opetan sävellystä vierailevana professorina Aichin Taideyliopistossa Japanissa. Eniten minua huolestuttaa nuorten uraansa vasta aloittelevien säveltäjien tulevaisuus. Pandemian vuoksi heidän mahdollisuutensa päästä ulkomaille opiskelemaan ovat rajoitetut. Juuri nuorelle säveltäjälle olisi ensiarvoisen tärkeää saada yhteys aikamme musiikin huipputulkitsijoihin sekä konserttisarjojen ja festivaalien järjestäjiin. Jos omat sävellykset hahmottuvat pelkkien MIDI-versioiden kautta elävien esitysten puuttuessa, estetään säveltäjältä todellisen orkesterisoinnin moniulotteisuuden tuntemus. Tämä kaikki näivettää ja köyhdyttää elävän musiikkikulttuurimme tulevaisuutta.

この秋、私は愛知県立芸術大学の客員教授として作曲を教えています。私が最も心配しているのは、キャリアを築き始めたばかりの若い作曲家の未来です。パンデミックのため、留学の機会は限られています。若い作曲家にとって非常に大切なのは、トップクラスの演奏家や、コンサートシリーズやフェスティバルの主催者と緊密に連絡を取ることです。ライブパフォーマンスがない状態で、自分の作品が単なるMIDIバージョンのみで留まると、作曲家は真のオーケストレーションの多次元性を知ることができなくなります。このままでは、ライブでの文化活動の未来が損なわれてしまいます。

Mitä sitten voimme tehdä tilanteen hyväksi? Kuinka saada päättäjät Suomessa ja muualla Euroopassa ymmärtämään sen tosiasian, että leikkaamalla loputkin tuet pois orkestereilta, oopperataloilta ja teattereilta, lähestymme todennäköisesti laajamittaista sukupuuttoon kuolemisen aaltoa taidemusiikin kentällä. Aivan samoin kuin ilmastomuutos uhkaa luonnon ekologista monimuotoisuutta, uhkaa lyhytnäköisten säästöleikkausten toimeenpano ainutlaatuisen ilmaisuvoimaisen traditiomme säilymistä ja uusiutumista.

それに対して、私たちは何ができるでしょうか?
フィンランドや他のヨーロッパの国々において、オーケストラ、オペラハウス、劇場へ、更に補助が滞ることで、芸術分野が絶望的な打撃を受ける可能性があります。
気候変動が自然の生態学的多様性を脅かすように、政策として財政的支援を更に削減された場合、これまでの伝統の存続と新たな創造が大きく妨げられるのです。

Juha T. Koskinen, 18. marraskuuta 2020

2020年11月

ラッセ・レヘトネン Lasse Lehtonen 音楽学者

1.How is your situation changing due to Covid-19 pandemic? Are there any aspects which have not changed?

The pandemic has posed various difficulties for me to conduct my research. As most libraries and archives relevant to my current project in Tokyo shut their doors in the spring, it became virtually impossible for me to keep on working on the primary sources of my research. This made me realize how critically my work depends on facilities that provide these source materials, whether writings or musical manuscripts.

As a researcher, also lecturing in an important part of my work. Needless to say, public lecturing has become virtually impossible. Although videotelephony programs are a practical tool to implement lecturing online, I do miss the possibility to interact with the audience freely and feel the presence of the listeners.

All this been said, the very core of my work has not changed. Doing research—examining sources, familiarizing oneself with theories, and applying these theories to one’s research data—is always a rather lonesome task regardless of the pandemic. Although the pandemic has severely hindered my possibilities to conduct research for my current project, I have been able to publish research articles on topics I have worked on before. In some cases, it has been refreshing to return to my older research topics and apply my current knowledge to them.

As a researcher, also lecturing in an important part of my work. Needless to say, public lecturing has become virtually impossible. Although videotelephony programs are a practical tool to implement lecturing online, I do miss the possibility to interact with the audience freely and feel the presence of the listeners.

All this been said, the very core of my work has not changed. Doing research—examining sources, familiarizing oneself with theories, and applying these theories to one’s research data—is always a rather lonesome task regardless of the pandemic. Although the pandemic has severely hindered my possibilities to conduct research for my current project, I have been able to publish research articles on topics I have worked on before. In some cases, it has been refreshing to return to my older research topics and apply my current knowledge to them.

パンデミックにより、私の研究活動はさまざまな困難に直面しました。ほとんどの東京の図書館と資料室が春に閉鎖したため、現在のプロジェクトに関連する主要な研究資料が得られず、私自身の執筆、自筆譜の研究は、これらの施設にどれほど大きく依存しているか実感しました。

研究者として、講義も私の仕事の重要な部分です。言うまでもなく、普段の公開講義は事実上不可能になり、動画配信に移行しました。オンライン配信は大切なツールと言えますが、聴衆との自由な対話や共有している感覚が得られないのを残念に思います。

資料を調べ、理論に精通し、これらの理論をデータに入力する一連の調査は、パンデミックに関係なく、常にかなり孤独な作業です。パンデミックにより、現在のプロジェクトの研究が大幅に妨げられましたが、以前、取り組んだトピックに関する研究記事を公開することができました。 時には、過去の研究課題を見直し、現在の知識に基づき加筆する中で発見があります。

2.What do you think of the current situation of art and culture in your country under Covid-19? Please tell us about your opinions the support from the state or other organizations in your country.

The situation is grave, but the Finnish state and such organizations as the Finnish Musicians’ Union have been quick to react to it by establishing new forms of support for artists and cultural institutions. I truly appreciate this, especially as I know that in many other countries, musicians are completely on their own. We should remember that performing artists are in the most vulnerable position when it comes to government-imposed restrictions on social gatherings, such as musical performances, and that they will require various forms of support as long as the situation is this critical. The most undesirable outcome of the situation would be that an artist is forced to abandon his or her work for anothersource of income.

フィンランドの状況は深刻ですが、政府や音楽家ユニオンなどの組織は、アーティストや文化機関に対する新しい形のサポートを確立し、迅速に対応しています。
この点で、音楽家が完全に孤立している多くの国に比べ、心から感謝しています。
政府がオペラ、コンサート等すべての演奏会を規制している今、芸術家の立場は最も脆弱で、深刻な状況が続く限り、さまざまな支援が必要です。芸術家は、別の収入源のために自分の仕事を放棄するという最悪の状況にならないよう守られるべきです。

3. How do you think about the musical activities and the situation in your country?
Do you think how the relations of performers and audience have changed in your country?

Individual musicians and concert organizers are doing their best to ensure that the audience can attend concerts without having to be concerned about the virus. For example, orchestral concerts in Finland are currentlyorganized with precautionary measures that include thelimiting the maximum number of listeners to one fifth of the normal quota and requiring the audience to use a face mask. Other precautionary measures have forced us to rethink our conception of a musical performance. For example, if the listeners are required to enter the hall at a given time and intermissions are not organized at all, thenature of a concert as a social gathering changes radically and affects also the musical performance itself. For example, with no intermission, concert programs cannot be too long, and exchange of views between listenersduring the intermission has virtually become impossible.This is a pity, as this, too, has been an essential part of the concert experience. I believe that these measures have not only distanced listeners, but also performers and listeners from each other.

個々の演奏家やコンサート主催者は、聴衆が心配なく来られるよう、感染対策に最善を尽くしています。たとえば、フィンランドのオーケストラの演奏会は現在、聴衆を5分の1に制限し、マスク着用の上、開催されています。他にも予防措置として、ホールへの入場時間の指定や、休憩なしのショートプログラムなど、これまでの演奏会の概念が再考されました。休憩中の聴衆同士のコミュニケーションが、演奏会の本質的な一部でもあるだけに残念です。これらの対策は、聴衆間だけでなく、演奏家と聴衆をも遠ざけることになると思います。

4. It seems that Covid-19 will last for a long time.
If you have any ideas to overcome this situation through your music activities, please let us know about them in detail.

First, I wish to emphasize that art is in a seminal position for us humans who want to cope with this crisis and overcome it. However, the situation is obviously extremely difficult for musicians. Although orchestras, for example, have organized concerts that are broadcasted online, I do not believe that an online performance canever substitute a live performance. The fundamental issue is that a live performance is supposed to be a unique social gathering that can never be reproduced or relived. With the internet already full of high-quality recordings of concerts that can be watched whenever one wishes, thedifference between an online concert and a previously recorded concert available online is not that notable. This been said, with the pandemic, online implementation will possibly be the only feasible alternative to organizing live performances in many countries for months or even years to come. This means that we must think of ways to make online concerts a unique experience. A key to achieve this would be to perform of new or rarely performed works more actively. For example, the orchestral oeuvre by Japanese and Finnish composerscomprises countless magnificent works that have never been recorded, meaning that there are no videos that may compete with an online performance of these works. If online concerts were preceded by a discussion—such as an introduction of the program—by musicians, concert organizers, or experts, including a possibility for the audience to directly ask questions or discuss with the artists online—this would also render an online concert a social gathering.
Luckily, institutions and musicians internationally have been quick to react to the situation. For example, the Finnish online music magazine Finnish Music Quarterly just released an article introducing what has been done in Finland: https://fmq.fi/articles/pandemic-proves-to-be-mother-of-invention

我々人類が、この危機に立ち向かい、克服するには、芸術が重要な位置にあることを強調したく思います。 しかし、現状は音楽家にとって、明らかに非常に困難です。例えば、オーケストラはオンラインコンサートを配信していますが、オンラインはライブに取って代わることはできません。 根本的なことは、ライブは決して再現も追体験もできません。また、インターネットで高品質のコンサートの録音をいつでも好きなときに見ることができるため、その時のみのオンラインコンサートの独創性はあまり感じられません。
多くの国で、オンラインコンサートが、今後数か月または数年にわたって、ライブパフォーマンスの唯一の代替手段になると言われています。 そのためオンラインコンサートが特別な体験になる方法を考えなければなりません。 その鍵は、あまり演奏されていない新しい作品を、より積極的に演奏する機会を設けることです。 たとえば、日本とフィンランドの作曲家によるオーケストラ作品は、これまで数え切れないほど多く演奏されていますが、録画が残されていないものも多くあります。つまり、オンラインパフォーマンスと競合する映像がありません。 また、オンラインコンサートの前に、アーティスト、オーガナイザー、または専門家と、プログラム紹介などディスカッションの場を設けて、聴衆がオンラインでアーティストに直接質問をしたり、話し合う可能性が考えられます。そうすればオンラインコンサートでも、聴衆とのコミュニケーションが可能になるでしょう。 幸いなことに、国際的な機関や音楽家はこの状況に迅速に対応してきました。例えば、フィンランドのオンライン音楽雑誌Finnish Music Quarterlyは、フィンランドでの活動に関する記事をリリースしました: https://fmq.fi/articles/pandemic-proves-to-be-mother-of-invention

5. Do you think that Covid-19 is related to global environmental issues?
If you think yes, please give us specific examples and tell us your thoughts.

Based on current, research-based knowledge on the virus, I do not believe that there is a direct connection. However,I do hope—and believe—that the pandemic makes us all think about how vulnerable humankind is when facing natural disasters, such as environmental issues, and thus provides us with a more fundamental understanding of how to cope with such a situation by international cooperation.

ウイルスに関する現在の研究によると、環境問題と直接的な関係があるとは思いません。 しかし、パンデミックによって、人類が、自然災害に直面したときに、どれほど脆弱であるかを考え、国際協力によりこの状況を乗り越える方法が見つかるよう願っています。 

2020年11月

アリ・ロンパネン Ari Romppanen 作曲家

1.How is your situation changing due to Covid-19 pandemic? Are there any aspects which have not changed?

Well, many performances and first performances have been postponed or cancelled, and I haven’t been able to attend some concerts including premieres. Also big part of my teaching is done remotely at the moment. And all social contacts have been reduced to minimum, less concerts, less everything.

The actual composing, which I do at my office is pretty much the same than before. For now, I’m in the lucky position that I’m in the middle of bigger collaborative project which has already started and will go on until February, and Covid-19 is not stopping it, although Covid must be taken care of.

多くの公演や初演が延期またはキャンセルされ、私自身も初演を含む一部のコンサートに参加できませんでした。また、私のレッスンの大部分は現在、リモートで行われています。そして、すべての社会的接触は最小限に抑えられ、コンサートも少なくなりました。
一方、作曲活動は、以前とほぼ同じです。今のところ、幸いにも、私はすでに開始されて2月まで続く大きな共同プロジェクトの真っ只中にいます。もちろんコロナには継続して気を付けていなかなくてはなりませんが。

2.What do you think of the current situation of art and culture in your country under Covid-19? Please tell us about your opinions the support from the state or other organizations in your country.

It seems that culture or art will be easily forgotten by state during these times. Industry is reducing few hundreds of their workers and it will cause big headlines and Prime Minister is visiting those cities to show her support, but everyone seems to forget that at the same time tens of thousands of people on culture areas and freelancers are without work because many events and concerts etc. are limited. There are few private foundations to share some grants for artists (also I got few), and also state gives some support, but it’s only a fraction compared to support for industry, even if the share of culture from GDP is really remarkable, bigger than many industrial sections.

文化や芸術は、この時代に政府(または国)からは簡単に忘れられてしまうようです。
企業による数百人の労働者の削減が大きな見出しとなり、サンナ・マリン首相は失業者への支援の意思を伝えるために該当する都市を訪れていますが、 同時に多くのイベントやコンサートの制限により、文化関係やフリーランスの何万人もの人々が仕事の継続を危ぶまれているのを、誰もが忘れているようです。
アーティストを援助する民間の財団もわずかにはありますが(私も若干得ました)、また政府もいくらか支援していますが、産業への支援と比較すれば、ほんのわずかです。 多くの産業部門よりもGDPの文化のシェアは本当に目に見えて大きいのですが。

3. How do you think about the musical activities and the situation in your country?
Do you think how the relations of performers and audience have changed in your country?

In last spring almost all musical activities were pressed down, cancelled or postponed until indefinite future, but now there’s already something happening, but mostly in the small scale. In concerts the whole orchestra is not on stage, and many some works are re-arranged (by composer) for smaller number of players or program selected for little orchestra.
Relation between performers and audience is more distant now, that intimate atmosphere which is sometimes is concerts is not present, it’s almost like watching streaming from YouTube with better Sound quality…

春には、ほとんどすべての音楽活動がキャンセル、または無期限に延期されましたが、今は少しづつ小規模の編成で、活動が再開されています。コンサートでは、オーケストラ全体がステージには乗らず、作曲家が作品を少人数用にアレンジするか、または小編成のオーケストラのためのプログラムに変更されています。
演奏者と観客の関係は今現在、距離を置かれており、これまでのコンサートのような親密な雰囲気は存在しません。まるでYouTubeからのストリーミングをより良い音質で見ているようなものです…

4. It seems that Covid-19 will last for a long time.
If you have any ideas to overcome this situation through your music activities, please let us know about them in detail.

While big organizations can’t act with their full capacity, it might give room for smaller groups and audiences. Chamber music was originally performed at private homes, maybe we could take it back to its roots during this special situation.

大規模な組織はこれまで同様の演奏はできませんが、小規模な編成や会場では可能性が高いでしょう。
室内楽はもともとは個人の家で演奏されていましたので、この特別な状況の間にそのルーツに戻すことができるかもしれません。

5. Do you think that Covid-19 is related to global environmental issues?
If you think yes, please give us specific examples and tell us your thoughts.

It might have a little influence. There’re less flights in the air and less cruising ships etc. which can give the atmosphere time to heal. On the other hand, at least here many people travel rather by their own car than by public transport because you don’t get Covid-19 in there, so there are also negative effects. But I guess there’re more about the good ones.

少し影響があるかもしれません。航空便、クルーズ船などが少なくなったことで、大気汚染が改善しつつあります。
その一方で少なくともここフィンランドでは、感染を避けるため、公共交通機関ではなく自家用車で移動することが多くなったという悪影響もあります。 しかし、好い影響を及ぼしていることの方が多いと思います。

2020年10月

イナリ / ヨハン・ティッリ Inari and Johann Tilli
フィンランド国営放送局(YLE)専属ジャーナリスト、楽譜出版社 Edition Tilli 運営

1.How is your situation changing due to Covid-19 pandemic? Are there any aspects which have not changed?

All concerts were cancelled in spring. Teaching activity was also run down.
Choir rehearsals were either cancelled or were organized remotely.

すべてのコンサートは春にキャンセルされました。教育活動も衰退しました。
合唱団のリハーサルはキャンセルされたか、リモートで開催されました。

2.Do you think Corona is related to environmental problems? If you think yes, please give a concrete example and tell us your thoughts.

No, I don’t think Corona is related to environmental problems.

いいえ、コロナは環境問題に関係しているとは思いません。

3.What do you think of the current state of art and culture in this time of Corona? Please let us know the correspondence cases of your country. Tell us about your opinions the support from the states.

It is quite challenging to keep up the artistically businesses that are making profit. The amount of audience is restricted due to the safety precautions.

芸術におけるビジネスでの利益を維持することは非常に難しいでしょう。
安全上の理由により、観客数は制限されています。

4.How do you think about the musical activities and situation, for example, the performersand the audience will change or will not change?

Once this is over, we may go back to normal. This period of Covid has taught us new elements and working tools in internet to find and discover new ways and methods.

コロナが落ち着けば、通常に戻るかもしれません。 しかし、このコロナは、インターネット上の新しい要素と作業ツールを考える機会をもたらしてくれました。

5.It seems like Corona will last for a long time,if you have any ideas to overcome this situation in your music activities, please let us knowin detail.

In Finland we have some choirs who have decided to use a hybrid method (=part of singers are present, the rest are joining the rehearsal remotely).

フィンランドには、ハイブリッド方式を決定した合唱団がいくつかあります(=歌手の一部が参加し、残りはリモートでリハーサルに参加しています)。

2020年11月